言志四録はリーダーの聖書(バイブル)として有名である。
著者・佐藤一斎の残した格言集である『言志四録』は四緑の名の通り四つの書物の総称である。
今回は言志四録の中で、佐藤一斎が一番若い時期(42歳~53歳)に書かれた『言志録』からリーダーたる者への格言を紹介したい。
*佐藤一斎 江戸時代の儒学者。一言で言えば、すごい人たちの先生。ようは大先生。
~言志録~
昨の非を悔ゆる者は之れ有り、今の過を改むる者は鮮なし。(第43条)
訳:
過去の過ちを後悔する人はいるが、現在していることの過ちを改める人は少ない。
土地人民は天物なり。承けて之を養い、物をして各其の所を得しむ。是れ君の職なり。人君或は謬りて、土地人民は我が物なりと謂うて之を暴す。此を君、天物を偸むと云う。(第46条)
訳:
土地も人民も天からの贈り物である。これを受けて養い、一人ひとりに地位や仕事を与えることが上に立つ者の務めである。もし指導者が誤り、土地、人民を自分のものと考え乱暴に扱うならば、それは指導者が天の物を盗むことといえる。
得意の時候は、最も当に退歩の工夫を著くべし。一時一事も亦皆亢龍有り。(第44条)
訳:
目的を達成した時こそ退くことを考えるべきである。一時であっても上り詰めた龍のような高い地位に就いたなら、退くことを考えなければ滅亡し悔いを残すことになる。
分を知り、然る後に足るを知る。(第42条)
訳:
自らの立場を知れば贅沢な事は望めないし、また才能を自覚すれば現状で満足することを知る。
緊しく此の志を立てて以て之を求めば、薪を搬び水を運ぶと雖も、亦是れ学の在る所なり。況や書を読み理を窮むるをや。志の立たざれば、終日読書に従事するとも、亦唯だ是れ閑事のみ。故に学を為すには志を立つるより尚なるは莫し。(第32条)
訳:
立派な人になろうとの強い志を立て、達成しようとするのなら、薪を運び水を運ぶことでさえ学びにつながる。ましてや書物を読み事の道理を知れば目的を達成しないわけがない。しかし志を立てていない者は終日読書に励んでも無駄に終わるだろう。何かを為すには志こそが大切である。
士は当に己れに在る者を恃むべし。動天驚地極大の事業も、亦都べて一己より締造す。(第119条)
訳:
一人前の男は、自分自身の力のみに頼るべきである。他人の財力・権力に頼ってはならない。点を動かし地を驚かすような大事業も、すべては優秀なひとりから生まれる。
己れを喪えば斯に人を喪う。人を喪えば斯に物を喪う。
訳:
自分自身を見失うと周りにいる人を失い、人を失えばなにもかも失う。
士は独立自身を貴ぶ。熱に依り炎に附くの念起すべからず。
訳:
立派な人物は、他人に頼らず自信をもって独立しており堂々と行動することを尊重する。権力にこび財力にへつらう真似はしない。
信を人に取ること難し。人は口を信ぜずして身を信じ、身を信ぜずして心を信ず。是を以て難し。(第148条)
訳:
人から信用されることは難しい。いくらうまいことを言ったとしても人はその言葉を信用せず、行動の方を信じる。いや、行動を信じるのではなく、その人の心のあり方を信じるのである。
信、上下に浮すれば、天下甚だ処し難し事無し。(第150条)
訳:
上下の人に信用があれば、できないことなどない。
凡そ事を作すには、須らく天に事うるの心有るを要すべし。人に示すの念有るを要せず。(第3条)
訳:
仕事をする場合は、天に仕えるといった謙虚な気持ちで行うのが大事で、人に自慢しようといった気持ちがあってはならない。
今回は第1弾として11条紹介した。
己の身の程をわきまえ、己の能力のみを信じ、他者に媚びへつらわない。
これが出来る人間がいかに少ないか、現代を生きている皆さまは良く知っているだろう。
志と自信をもった人間こそが、いつの世も立派な人間であることは誰もが知る所である。
しかし、なぜそれができないのか。権力・地位・金・贅沢、これらに勝てず不正を行う人間ばかりだからだ。
あなたがリーダーとして地位や役職を得たのならば、それをどう使うか、そこであなたの本質がわかる。
課題先進国の日本に、サムライの志がよみがえればと願う。
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 格言「言志四録」~リーダーの聖書(バイブル)~ 言志録その1 […]