キリスト教解説:日本人が分からない宗教の話

キリスト教がいかにして生まれたか。

どういう宗教なのか。

キリスト教という名前は知っていても中身までは知らないひとが多いだろう。キリスト教は世界的に信者が多い宗教であり、世界の実質トップであるアメリカもキリスト教信者の国だ。知っておく必要はある。

 

 

まず、キリスト教について知るにはその母親的存在であるユダヤ教について知っておくと、この先の説明がわかりやすくなる。こちらの記事から読むことをすすめる。(知らないとわからない事があるかも)

めんどくさいようならこちらの記事からでも構わない。

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キリスト教の成立について説明する前に、ユダヤ人の国家であるイスラエルの歴史について触れておく。

イスラエルはソロモン王の時代に繁栄を極めた。イスラエルの中心であるエルサレムにソロモンの神殿をつくった。その残骸の一部が現在の「嘆きの壁」となっている。

そのイスラエルの繁栄は、ローマ帝国によって崩れ去った。ローマ帝国の軍事力によりイスラエルは植民地となった。しかしユダヤ民族は「選民思想」があり、さらに当時ローマ帝国は一神教ではなくギリシャ神話のジュピターやマーキュリーなどを神とする多神教だったため、ユダヤ教徒からすれば「誤った神を信ずる下等な人種」だった。そのためユダヤ民族はローマ人に支配されていることが苦痛でならなかった。「自分たちは神に唯一選ばれた民族なのに。」と。

 

 

そういったムードはメシア待望につながっていった。メシアとは「救世主」のことである。当時の救世主とは、神に選ばれた民族であるユダヤ人を、悪の帝国ローマから救う軍事的英雄を意味していた。

そういう状況下で、イスラエルのナザレという場所で大工の息子としてイエスという人が生まれる。

彼は成長につれて様々な奇跡を起こす。その例は以下のようなものである。

 

すると、片手の萎えた人がいた。イエスはその人に、手を伸ばしなさいと言われた。伸ばすと、もう一方の手のように、もとどおりよくなった (新約聖書『マタイによる福音書』第12章10~13節)

 

イエスがガリラヤ湖のほとりに行ったところ、大勢の群衆がいた。足の不自由な人、目の見えない人、体の不自由な人、口のきけない人、その他多くの病人を連れてきて、イエスの足元に横たえた。イエスがこの人たちに対して祈ったところ、口のきけない人が話すようになり、体の不自由な人が治り、足の不自由な人が歩き、目の見えない人が見えるようになった (同 第15章29~31節)

 

 

こういった奇跡から、イエスは神の子ではないかとされ、救ってくれるのではと期待されるようになった。これに対しイエスは「信じる者は救われる」「天国は近づいた」「貧しい者は幸いである」などというようなことは言うが、ローマに対しては積極的なことは言わなかった。というか、ローマ帝国に反抗する意思をみせなかった。税金をとりにきた時も反抗するわけではなく、「皇帝のものは皇帝に」といった。

イエスの意志は、人類を救いたいというものであった。(イスラエルを救いたいわけではない)

反してユダヤ人はイスラエルを救ってくれることを期待している。

こうしたわけで、イエスはだんだんユダヤ人から憎まれ始める。やつは神の名をかたるペテン師だと。

この段階でイエスは予言する。

 

イエスはエルサレムへ上っていく途中、二人の弟子だけを呼び寄せて言われた。今、私たちはエルサレムに上っていく。人の子は、祭司長や律法学者たちに引き渡される。彼らは死刑を宣告して異邦人に引き渡す。人の子を侮辱し、鞭打ち、十字架にかけるためである。そして、人の子は三日目に復活する。(『マタイによる福音書』第20章17~19節)

 

 

イエスは一度死ぬが、復活する。そう述べられている。

予言のとおり、イエスはエルサレムへ行き、つかまり、宗教裁判の結果神を名乗る者として死罪となる。

 

 

当時イスラエルはローマ帝国の支配下にあった。そのため、ローマから最大の権限をもった総督という立場の人が送り込まれていた。当時はローマ人のピラトという総督であった。

新約聖書『マタイによる福音書』によると、ピラトはイエスを悪い人物だとは思わず、逆に正しい人物だと思っていた。ところがユダヤ人が奇跡が起こせるという妬み嫉みのために殺そうとしている、彼らは悪い奴らだと書いてある。

ピラトはイエスを助けようとして、祭りを利用する。祭りとは神様を祀るもので、当時イスラエルでは祭りのたびごとに囚人を一人恩赦として釈放するという決まりがあった。

そのとき、死刑に値する人物は二人いた。一人はバラバという泥棒、もう一人がイエスという思想犯。ピラト総督はユダヤ人にどちらを助けたいかを聞いた。

 

そこで総督が、二人のうちどちらを釈放してほしいのかと言うと、人々はバラバをと言った。(『マタイによる福音書』第27章21節)

 

ピラトは、では、メシアと言われているイエスの方はどうしたらいいかと言うと、皆は十字架につけろと言った。ピラトは一体どんな悪事を働いたというのかと言ったが、群衆はますます激しく、十字架に架けろと叫び続けた。ピラトは、それ以上言ってもむだなばかりか、かえって騒動が起こりそうなのを見て、水を持ってこさせ、群衆の前で手を洗って、言った。この人の血について、私には責任がない。おまえたちの責任だ (同上第27章22~24章)

 

 

ピラトはこの人がこれから磔にされて死ぬことは私の責任ではない、お前たちユダヤの責任だぞ、ということだ。それに対して民はこぞって

「血の責任は、我々と子孫にある」

と言った。これは、イエスを殺すことは我々自身と、子孫にもあると言ったことになる。ここは重要なポイントなので覚えておいてほしい。

 

 

 

こののち、イエスはエルサレムにある「ゴルゴタの丘」で処刑される。その後遺体は引き渡され、一度埋葬される。そのあと、予言のとおり三日たって人々が墓に行ってみると、墓が空っぽだった。そして生きているイエスを見たという人が何人も出てきて、イエスの予言は本当だった、イエスは一度死んだが復活したんだということになった。

イエス・キリストとなったわけである。キリストとはギリシャ語で救世主を意味する。つまり、イエス・キリストはフルネームというわけではなく、イエス=キリスト、イエスはキリスト(救世主)ということである。

イエス・キリストと呼ぶ人は基本的にキリスト教信者で、イエスはもともと人間ではなく神だったんだと信ずることが基本となっている。

私はイエスの出生について、「イエスという人が生まれた」と上記したが、中世ヨーロッパでこんなことを言ったら確実に殺されている。イエスは神であり、人ではないと信じられているからだ。

 

 

 

 

ここでユダヤ教のことを思い出してほしい。ユダヤ教は一神教であり、その神はエホバ(ヤハウェ)である。つまり、イエスを神とするキリスト教とは相容れない関係にある。

キリスト教も、もとはユダヤ教からの派生であり、聖書ではイエス本人もユダヤ人として生まれている。そのため、イエスを神とするとキリスト教自身にも矛盾が生じてしまう。そこで、イエスを神の子とした。

父(エホバ)が行動し、子(イエス)が行動し、もう一つは聖霊が何事かもなす。三者があって、それが相互に行動しているように見えるが、その根源は一つなのだという「三位一体」の考え方を生み出した。

聖霊とは、モーセが率いた出エジプトの際に紅海が真っ二つに分かれ道ができた力などがそれにあたる。そういったものについて「聖霊の働き」という言い方をした。

今ではカトリックもプロテスタントも99%が三位一体説をとる。そうしないとイエスの神性を認めることが不可能であるからだ。(そうしないと神がエホバとイエスという2人存在することになる)

 

 

 

しかし、もう一つ問題が残る。

ユダヤ教によると、エホバと契約したユダヤ人はエホバのみを神とすることでエホバからひいきされるという契約をしている。

しかし、キリスト教によると、人類を救いたいとするイエスの言葉が正しいと認める者は、全て救いの対象に入る。

つまり、ユダヤ教はユダヤ人だけが救われる契約だったが、キリスト教ではその対象が全人類に拡大している。

その理由をキリスト教は、

唯一絶対の神はイエスというひとり子を全人類のところに差し向けて、しかも、イエスが全人類のすべての罪を背負って、十字架の上でわざわざ殺されてくれた。彼の犠牲によって全人類の罪は贖われた。

としている。つまりここから契約が変わった。神様とユダヤ人だけの契約だった(旧約聖書)のが、神様と全人類の契約(新約聖書)としたのがキリスト教なのである。

これがおおまかなキリスト教の概要である。

 

 

 

しかしユダヤ教はもちろんイエスを神と認めるはずがなく、イエスはユダヤ人として生まれ勝手に死んだという立場をとる。こういう解釈の違い、主張の違いにより宗教対立が起こるわけである。

ユダヤ教・キリスト教と学んだら、次は同じくユダヤ教から派生したイスラム教について知ることをすすめる。イスラム教もエルサレムを聖地とするために宗教問題が発生し、紛争が絶えない。その理由を知りにいこう。

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文系で日本史専攻→システムエンジニア
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