嘘と盛られた話ばかりの世の中で。

世の中は嘘であふれている。特に、インターネットやSNSで誰でも自由に発言できる今は嘘・虚言の類が横行している。2ちゃんねる創始者のひろゆき氏は「嘘は嘘であると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」という言葉を残しているが、話を面白く装飾するために多かれ少なかれ嘘を盛り込んでいる人が大多数だ。

 

この現代にの嘘について、徒然草を引用して考えてみたい。

 

世間で語り伝えることは、事実のままではおもしろくないのであろうか、多くはみな嘘偽りである。事実ある以上に人は物事を大げさに言い立てるうえに、まして年月が過ぎ、場所も隔たってしまうと、言いたい放題に作り話をして、文字にでも書き留めてしまうと、またそれがそのまま定説になってしまう。(第七三段)

 

話は人から人へ渡っていく過程で毎度嘘の情報を帯びるということだ。年月、場所を隔て、されに文字に起こそうものなら原型とはまるで別物の話となっているのである。

これは実際に経験している人が多いので理解しやすいだろう。特に、インターネット・SNSは文字に書き留める作業がはいるため、特に注意して見なければならない情報である。

また、うそのつきかたにも種類があると言う。

 

話す先からいっぽうでばれるのもかまわず、口からでまかせに言い散らすのは、すぐに根も葉もないこととわかる。(同)

 

子どもの嘘はこの類だろう。また、お笑い芸人などもこの類のすぐに嘘とわかる発言で笑いをとったりする。特に実害がない嘘であり、時に人を笑わす力をもっている。

 

 

また、自分では本当ではないと思いながらも、人の言った通りに、鼻をぴくぴくさせて得意げに話すのは、その人の嘘ではない。(同)

 

聞いたことを誰かに話したくてうずうずしてしまうタイプだ。この類の嘘はいわゆる都市伝説好きに多い。嘘か真かわからないが、世界の真実を知ってしまったと興奮して誰かに話したくて仕方がない。この連鎖が都市伝説や陰謀論を広めているわけだが、確かにその人の嘘ではない。しかし、悪い連鎖の要因であることは間違いないだろう。

 

 

もっともらしく、話のところどころをぼんやりさせ、よく知らないふりをして、それでいて、辻褄を合わせて語る嘘は、恐ろしいことである。(同)

間違いなく、詐欺がこれにあたる。100%のでっちあげをせず、ところどころを曖昧にして、それでいてそれなりの正当性をのこす。曖昧になった部分は聞いた側の推測で埋めさせる。巧妙な嘘であり、嘘をつくと自覚している人がつく悪質なものである。

 

これらを見て、嘘には害のあるもの、ないものがある、と解釈できるが、うそはどれも害のあるものと私は思う。うそが人を楽しませることもあるが、それはお笑い芸人のような言葉遊びのプロができる高レベルなものだ。ふつうの世間話の中でうそをついてもジョークと受け取らない人もいる。それがその後トラブルを引き起こす可能性も多分に含んでいる。あいつは冗談がわからないからダメだ、などと嫌われ者の上司のような考えをもっていては自分の人間関係を狭めるだけである。

 

 

とにもかくにも、嘘の多い世の中である。ただ。よくある、珍しくもない話として受け取っていたなら、万事間違いはないだろう。下賤な人の話は、聞いて驚くようなことばかりである。教養ある人は不思議なことは語らない。(同)

驚くような話はほとんどが下賤な人の嘘であって、知識のある人の真実の話は面白みがない。これはたしかにそうだと言わざるを得ない。盛りに盛られた頭の中がファンタジーな話は面白い話として民衆に受け入れられやすいが、論理のそって筋道の通った話は窮屈で受け入れられにくい。だから嘘の話が横行する。

しかし、何の脚色もされていない真実の話のほうが面白く感じるのは私だけだろうか。驚くようなファンタジーさがなくとも、なるほどそうかと感じる話のほうがふとした時に思い出すし、何より生きていくための知識となる。嘘の話が好きな人は今盛り上がりたい人、教養のある話がしたい人は未来の自分を見ている人だろう。おそらく民衆はみな今楽しければそれでよいのだ。

 

 

愚者の間の戯言でさえ、真相を知った人の前では、これらのさまざまな受け止め方が、言葉からでも顔色からでも、すっかり知られているに違いない。(第一四九段)

 

達観した人の人間を見通す眼は、少しも誤るところがない。(一九四段)

 

面白い話だと盛り上がっている人がいる中で、それらは嘘だと見透かしている人がいる。

あなたは愚者か、達観した人間か。

嘘は嘘であると見抜ける人でないと生きていけない時代になってきている。公然とTwitterにのっている情報は本当なのか、ネットにのっている情報は本当なのか。嘘ならば嘘だと見抜かなければならない。

この世の中、愚者に騙されずに生きていくには自らが知識をつけるしかない。嘘か真か、それを自分で見抜ける能力が求められている。

 

 

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